美容師が行うインクメイクは違法?アートメイクとの違い・値段・注意点

本記事は、医療アートメイクの臨床経験を持つ石橋 夏希が、専門的知見に基づき監修しています。
「落ちないメイク」として注目を集めているインクメイク。
アートメイクよりも気軽に受けられますが、タトゥーに位置付けられるため、その違いを踏まえた上で慎重に検討しましょう。
インクメイクとは
インクメイクは、タトゥー技術を使った美容メイクの一種です。
専用のマシンとカートリッジ(針)を使って皮膚に色素を定着させることで、メイクしているかのような仕上がりが得られます。
アートメイクと似ているものの、施術は美容師や美容関連の施術者が行うタトゥーなので医療行為ではありません。
このため美容クリニックなどの医療機関ではなく、美容サロンなどで提供されるのが一般的です。
施術できる部位
施術できる部位は、首から上の健康な皮膚(傷・炎症・皮膚疾患がある部位は除く)です。
- アイブロウ(眉)
- ヘアライン
普段のメイクのサポートになるだけでなく、生え際や頭皮の透け感をカバーするのにも役立ちます。
なお、リップとアイラインについては粘膜や眼球に近いため、医療資格のない施術者ではリスクがあるため行われていません。
アートメイクとの違い
アートメイクとインクメイクの大きな違いは、医療に関連する行為ができるかできないかです。
以下に主な違いをまとめます。
| アートメイク | インクメイク | |
|---|---|---|
| 分類 | 医療行為 | 非医療行為(刺青行為) |
| 施術者 | 医師・看護師(医師管理下) | 美容師・民間施術者 |
| 医療対応 | 可 | 不可 |
| 受けられる場所 | 医療機関 | 美容室や各種美容サロンなど |
針で皮膚に傷をつける以上、これらの違いは安全管理だけでなく、施術中・後の経過や仕上がりにも影響する可能性があります。
色もち(持続期間)
インクメイクの色もちは、およそ半年〜2年程度が目安とされています。
タトゥーといわれていますが、半永久的に消えないわけではなく、時間の経過とともに少しずつ薄くなっていきます。
またデザインが定着(完成)するまでには2回の施術が一般的ですが、持続期間には個人差があります。
肌質やライフスタイルの違いだけでなく、施術者の技術や部位によっても色もちが変わりやすいです。
インクメイクの料金
インクメイクの料金は、以下の価格設定が主流となっています。
- 基本料金
-
3.3万円〜4.4万円(税込)/ 1回
- セット料金
-
6.6万円〜7.7万円(税込)/ 2回
認定サロン条件に基づき、施術価格の下限は1回あたり3.3万円(税込)と定められています。
サロンごとで大きな料金差はなく相場も安定していますが、施術方法やデザイン内容によって費用が上がることがあります。
インクメイクのメリット・デメリット
インクメイクには美容サロンだからこそ得られるメリットがあるものの、良い面ばかりではありません。
医療行為ではないため、必ず知っておかなければならないデメリットもいくつかあります。
メリット
- 半年〜2年はメイク崩れの心配がない
- アートメイクの半額ほどで受けられる
- 眉や目のコンプレックスをカバーできる
美容タトゥーとしてサロンで提供されているため、気軽かつ低価格で受けられるのがインクメイクの大きなメリットと言えるでしょう。
またメイクの手間が減り、なりたい印象を長くキープできる点も魅力的です。
デメリット
- 心身ともに健康でなければ受けられない(自己申告)
- 医療トラブルに対処できない
- 衛生管理はサロンごとの基準
- 痛みあり(麻酔不可)
- 除去対応はできない
インクメイクは、医療に関連する行為を一切行えません。
施術ミスや健康上のトラブルはすべて自己責任での対応になり、施術前後のフォローアップが難しいのは大きなデメリットです。
インクメイクの資格について
インクメイクは独自の民間資格制度を運用するITTA(一般社団法人国際タトゥーアーティスト協会)がありますが、国家資格は存在しません。
また同協会は美容師資格の保有を強く推奨しているものの、目的はあくまで衛生管理知識の向上です。
タトゥーサービスである以上、資格の有無によって安全性が担保されるわけではないことを理解しておく必要があります。
施術者について
インクメイクの施術を行うのはタトゥーアーティストではなく、主に美容分野の資格を持つ施術者です。
- 美容師
- メイクアップアーティスト
- ヘアメイクアーティスト
- アイデザイナー
- アイブロウデザイナー
- ネイリスト
これらの施術者がITTAより民間ライセンスの発行を受けて、ファッションやメイクの知識・経験を活かしてデザインを行います。
なかにはタトゥー未経験の方もいるので、技術レベルや仕上がりには個人差があります。
違法性はあるか
2020年9月16日に最高裁判所は、「装飾を目的とする入れ墨は医行為には当たらない」と判断しました。
そのため、医療行為を行わない純粋なタトゥーサービスとしてインクメイクを提供する場合は合法とされています。
[参考:裁判所ウェブサイト|平成30年(あ)第1790号 医師法違反被告事件]
(https://www.courts.go.jp/hanrei/89717/detail2/index.html)
インクメイクの注意点
インクメイクは、アートメイクと同様の効果を期待してサロン価格で受けられると誤解されがちですが、医療機関以外での施術となることには十分な注意が必要です。
施術リスク
アートメイクと同様の技術を用いるため、似たようなトラブルが発生するリスクがあります
- 皮膚障害
- 施術範囲外に色素が入ってしまった
- 角膜に傷がついた など
こうしたトラブル相談の95%は、医師の管理下にない美容サロンなど無資格者による施術とされています。
インクメイクも同様の環境で行われるため、施術を受けた後のことも考えてからサービスを選ばなければなりません。
[参考:国民生活センター|アートメイクの危害]
(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000223vo-att/2r9852000002242i.pdf)
インクメイクを受けられない人
- 病変した皮膚
- ほくろと悪性黑色腫(メラノーマ)
- 尋常性白斑
- 手術創部の瘢痕
- 口唇口蓋裂術後の瘢痕
- 乳がん患者の乳房切除後の乳輪
- 乳頭の色素形成
- 化学療法誘発性脱毛症に対する色素形成
- 保険が適応されるAGA治療·精神疾患での脱毛症(円形脱毛症など)
施術できるかの判断は自己申告となり、施術者が健康状態からリスクを判断することはできません。
この他に持病がある方や服薬中の方、妊娠・授乳中の方も、事前に医師に相談してから検討する必要があります。
トラブル時が起きても治療できない
万が一、施術中・施術後にトラブルが起きても次のような医療行為は受けられません。
- 麻酔薬の処方・投与
- 皮膚状態の診断
- 治療目的の処置
- 医療機器・医薬品の使用 など
施術部位の異常や感染症、アレルギー反応などが現れた場合、最終的には医療機関での治療が必要です。
痛みについて
医療行為が一切できないインクメイクは、表面麻酔なしでの施術となります。
針で皮膚の表面を傷つけるので強い痛みを伴う可能性があり、人によっては施術を中断せざるを得ない場合もあります。
また体の緊張や動きが仕上がりに影響することもあるので、痛みに敏感な方や不安が強い方は慎重に検討しましょう。
まとめ
インクメイクはアートメイクと似た施術をサロン価格で受けられるので、新しい美容の選択肢として注目を集めています。
しかし医療によるサポートを受けられないため、施術におけるリスクを自己管理しなければならないのは大きな違いです。
あくまでタトゥーサービスである以上、医療行為との違いを十分に把握した上で施術を検討してみてください。
