アートメイクの注意点

本記事は、医療アートメイクの臨床経験を持つ石橋 夏希が、専門的知見に基づき監修しています。
アートメイクは、皮膚に傷をつけるリスクを伴う医療行為です。
持病や体質によっては施術を受けられないこともあり、施術後の日常生活にも制限やリスクが伴います。
施術を受けられない健康状態・体質
- 妊娠中または妊娠の可能性がある
- 授乳中(※48時間断乳で可とする院もあり)
- ケロイド体質
- 重度の金属アレルギー
- 麻酔薬(リドカイン等)にアレルギー
- 重度のラテックスアレルギー
- 血液疾患・出血性疾患(血友病、血小板減少性紫斑病など)
- 重度の心臓病(ペースメーカー等)
- 重度の高血圧(コントロール不良)
- 重度の糖尿病(コントロール不良)
- 全身性の感染症(B型肝炎、C型肝炎、HIV、梅毒など)
- 免疫抑制状態・自己免疫疾患(膠原病など)
- てんかん発作の既往がある
- 精神疾患・心療内科通院中
- アルコール中毒・薬物依存(※肝機能障害のリスク含む)
- 施術部位に皮膚疾患や強い炎症がある(ニキビ、ヘルペス、日焼け等)
- 局所悪性疾患(皮膚がん等)
- 抗がん剤・放射線治療中(免疫低下中)
- 抗凝固剤・抗血小板薬を服用中(血液をサラサラにする薬)
- ステロイド剤を長期服用中
これらに当てはまる場合でも、症状の程度やクリニックの方針によって判断が異なります。
自己判断せず、必ず事前の医師の問診中に申告し、必要であれば主治医の許可書や検査データがあれば持参するようにしましょう。
スケジュール調整が必要な治療・ケア習慣
アートメイクは他の美容治療やスキンケア、医療行為とのスケジュール調整が必須です。
同時期に行うと肌トラブルや定着不良の原因になるほか、施術自体が制限される場合もあります。
美容治療・美容整形
アートメイク前後2週間〜1ヶ月は、美容治療や美容整形との施術間隔を空ける必要があります。
- 注入系治療(ボトックス・ヒアルロン酸)
- しみ・たるみ治療(糸リフト、HIFU、レーザー治療)
- アートメイク部位に影響する美容整形 など
肌への負担や、顔パーツの形状変化によりデザインズレが生じることがあり、特に美容整形は施術内容によって6ヶ月ほど空ける必要があります。
またアートメイク後にレーザー治療(脱毛・シミ取り)を受ける際は、施術部位を避けなければなりません。
インクの色素が反応し、変色や火傷を起こすリスクがあります。
ピーリング成分やレチノールを含むスキンケア製品
肌のターンオーバーを早めるスキンケア製品は、アートメイク前後2週間〜1ヶ月は使用を控える必要があります。
ゼオスキン、エンビロン、ガウディスキン、トレチノイン、ディフェリンゲルなど
スクラブ洗顔料、ピーリング石鹸、グリコール酸やリンゴ酸、サリチル酸配合の化粧水など
色素の定着を妨げたり、肌のバリア機能が低下することで、施術中に通常より痛み、赤み、腫れ、出血が強くなる可能性があります。
ワクチン接種
インフルエンザや新型コロナウイルスなどの予防接種を受ける場合、アートメイク前後1週間〜2週間ほどの間隔を空けてください。
接種後に発熱や腫れなどの副反応が出た際に、その症状がワクチンの影響なのか、アートメイクによる感染症やアレルギーなのか判別がつかなくなるためです。
献血
アートメイク施術後、少なくとも6ヶ月間は献血を行うことができません。
針の使用による肝炎などのウイルス感染のリスクがあることから、日本赤十字社の規定により制限されています。
また感染していても細菌やウイルスを検出できない期間(ウィンドウ・ピリオド)もあるため、6ヶ月以降は医師の判断によって献血が可能となります。
[参考:日本赤十字社|献血をご遠慮いただく場合]
(https://www.jrc.or.jp/donation/about/refrain/detail_07/)
ダウンタイム中のNG行動
アートメイク施術後約1週間のダウンタイム中は、日常生活の一部に制限がかかります。
- 施術部位へのメイクやクレンジング
- 水で濡らす
- 代謝が上がる行為(激しい運動、サウナ、長風呂、飲酒など)
- かさぶたを無理に剥がす
- 施術部位を触る・擦る
- 日焼け など
この期間は施術による傷口が塞がっておらず、色素も不安定な状態です。
肌トラブルや、色素の定着不良(変色・色ムラ・早期退色)の直接的な原因になるため、それぞれクリニックで指定された期間は控えてください。
長期的にみた時のリスク
アートメイクを一度施すと、完全に元の状態に戻すことはできません。
施術直後だけでなく、将来的なリスクも踏まえたうえで施術を検討する必要があります。
デザインの経年変化
加齢に伴う顔立ちの変化や色素そのものの劣化により、アートメイクのデザインは徐々に変わっていきます。
入れた当初はバランスが良くても、数年後の肌のたるみによって位置が下がったり、歪んでしまうほか、変色や部分的な色抜け、にじみが生じることがあります。
デザイン修正(リタッチ)の限界
アートメイクのデザイン修正は、基本的に色素を足すことしかできません。
メイクのように後から薄くしたり、細くすることはできないため、1回で完成させてしまうと修正が効かなくなります。
除去に伴うリスク
アートメイクは複数回の除去治療によって薄くすることはできますが、完全に元の肌に戻すことはできません。
入っている色素によっては黒く変色することや、レーザーに反応して一時的に毛が白くなったり、生えなくなることがあります。
火傷跡や肌に凹凸が残るリスクもあるため、いずれ消す前提で施術を受けるのはおすすめできません。
MRI検査への影響
アートメイク後のMRI検査は基本的に可能とされていますが、検査を実施する医療機関の判断にもよります。
色素には微量の金属成分が含まれており、施術部位に熱感などの刺激が生じたり、画像の乱れによって正確な診断の妨げになることがあるためです。
特に2010年以前(約15年以上前)に入れた古いアートメイクには、現在のものより多くの金属(酸化鉄)が含まれている可能性が高く、火傷や画像ノイズのリスクも上がります。
部位ごとの注意点
アートメイクは、施術部位によって注意点が異なります。
施術前から制限される行動などもあるので、希望部位の禁止事項やルールを把握しておく必要があります。
眉毛アートメイク
自己処理による傷で施術できなくなるのを防ぐため、直前の剃毛や抜毛は避けなければなりません。
また色素の定着に影響する、眉カラーやティントの使用も施術の1〜2週間前から控える必要があります。
リップアートメイク
乾燥は色ムラの原因となるため施術1週間前から保湿を徹底し、リップティントの使用は控える必要があります。
また口唇ヘルペスの既往歴がある場合は刺激で再発するリスクがあるため、予約時にクリニックへの相談が必要です。
アイラインアートメイク
施術中に眼球を圧迫するため、現在進行中の眼科疾患(緑内障や白内障、網膜剥離など)がある方は施術を受けられません。
色素のにじみの原因になるまつ毛美容液は1ヶ月前から使用を中断し、エクステは事前にオフしておく必要があります。
頭皮(生え際・ヘアライン)アートメイク
薄毛治療薬(ミノキシジル)は出血や定着不良の原因となるため、施術の1〜2週間前から使用を中断しなければなりません。
ヘアカラーやパーマも頭皮や額への負担や変色リスクから、施術の1〜2週間前から控える必要があります。
ほくろアートメイク
皮膚がんなどの病変を見逃すおそれや、刺激によるトラブルのリスクから、もともとあるほくろやシミの上への施術はできません。
新たな位置に描く施術に限られるため、すでにあるほくろを濃くしたり大きくしたりする目的では受けられない点に注意が必要です。
ボディアートメイク
傷跡や肉割れなどへの施術は、赤みが引いて白く定着した状態(成熟瘢痕)でなければ行うことができません。
ケガや手術後は一般的に6ヶ月以上の待機期間が必要となり、傷が盛り上がってケロイド化している場合は施術不可となります。
信頼できるクリニックの選び方
アートメイクは医療機関にみせかけた、実態のあいまいな施設が提供していることも少なくありません。
知らずに法的なトラブルや、無資格者による健康被害に遭うリスクを避けるためにも、保健所に届出を出した医療機関であるかを必ず確認しなければなりません。
サロンや美容室などでのアートメイクは違法
アートメイクは医療行為のため、医師のいる病院・クリニック以外での施術は違法となります。
これまでグレーゾーンとされていたサロンや美容室での「〇〇メイク」や「〇〇タトゥー」なども取締りの対象となり、2025年12月26日の厚生労働省の通知によって警察との連携による監視がより強化されています。
トラブルに巻き込まれるリスクもあるため利用は控えましょう。
[参考:厚生労働省|美容所等におけるアートメイク施術について]
(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001624504.pdf)
海外での施術について
安さやトレンドを求めて海外でアートメイクを受ける方もいますが、言葉の壁で希望が伝わらなかったり、衛生管理の違いからトラブルになるリスクがあります。
また帰国後のフォローが難しく、国内のクリニックにリタッチや修正を頼んでも断られるケースもあるため注意が必要です。
まとめ
アートメイクは医療行為のため、事前にさまざまなリスクを取り除く必要があります。
メイクの延長として気軽に受けられるわけではないので、医師の判断によって施術を受けられないケースも珍しくありません。
自己判断できないことから、医師の診察・問診で確認してもらうようにしましょう。
