アートメイクとMRI検査|安心して受けるためのポイント

本記事は、医療アートメイクの臨床経験を持つ石橋 夏希が、専門的知見に基づき監修しています。
アートメイクしてしまうと「MRI検査は受けられないのでは?」と不安に思う方も少なくありません。
このページではアートメイクとMRIの関係や、実際にどんなリスクやトラブルが報告されているのか詳しく解説します。
アートメイクしててもMRIは受けられるの?
アートメイクをしていてもMRI検査は受けられます。
ただし、施術直後やインク・色素が入っている部位などによっては見合わせる場合があるので必ず検査医師に申告することが必要です。
「アートメイクをしていると絶対にMRIができない」というわけではなく、実際にはほとんど問題なく安全に検査が行われています。
なぜアートメイクはMRI検査に影響するの?
MRIとは強力な磁場とラジオ波を使い、体内の任意の部分を断面図として映し出す検査です。
発生した磁場にアートメイクのインクには金属成分が反応するため、熱や刺激が生じたり、検査精度に影響を及ぼすことがあります。
インクに入っている金属
アートメイクのインクには、発色や定着を良くするために微量の金属成分が含まれていることがほとんどです。
- 酸化鉄
- 二酸化チタン
- 酸化亜鉛
- クロム
- ニッケル など
現在はこうした金属成分の含有量が抑えられていますが、2010年ごろまで使用されていたインクは金属量が多い傾向にあります。
そのためアートメイクを受けた時期によっては、MRI検査のリスクがやや高めとされています。
部位によってリスクが違う
MRI検査のリスクは、アートメイクの施術部位によって異なるとされています。
インクの入り方や皮膚の厚みも部位ごとで違うため、MRIの磁場の影響の受けやすさに差が生じます。
眉・リップ・ヘアライン
眉やリップ、ヘアラインのアートメイクは比較的リスクが低い部位です。
皮膚が厚く、インクが分散して入るため、熱が集中しにくいことが理由としてあげられます。
ごく稀に軽い熱感や違和感を覚えるケースはありますが、深刻なトラブルの報告はほとんどありません。
アイラインの場合
MRI検査において、もっとも注意が必要な部位がアイラインアートメイクです。
まぶたの皮膚は非常に薄く、上下まぶたに入れたインクが目を囲むようにリング状になることでMRIの磁場によって高周波電流ループが発生しやすくなります。
これにより局所的に熱がこもりやすく、特に目を開けた状態では磁場の影響を強く受けやすいです。
報告されているトラブル
アートメイクをしている人がMRI検査を受けた際に、インクの金属成分の影響で施術部位に症状が出たり、診断画像が乱れることが報告されています。
体に出る症状
報告されている症状の多くは、軽度なものとされています。
- 軽い熱感
- チクチクとした刺激
- 赤み
まれに火傷が生じた例もありますが、頻度としてはごく稀です。
施術直後や金属量の多いインクを使用した場合、またはアイラインアートメイクでは発生しやすいとされています。
画像診断時におけるトラブル
アートメイクに含まれる金属成分がMRIの磁場に影響を与え、画像に”アーチファクト”と呼ばれる乱れが生じることがあります。
黒い影や歪みがみられることで、施術部位周辺の画像がやや不鮮明になる場合があります。
アートメイクは主に顔や頭に施されるため撮影範囲と重なりやすく、脳や眼窩など重要な部位の検査では注意が必要です。
なお、実際には診断不能になるほどの事例はほとんど報告されていません。
トラブルが起こる割合
日本でのデータはほとんどありませんが、2002年にアメリカで行われた大規模調査(アートメイクとタトゥーを含む)では、MRIを受けても大きな問題はほとんど起きていないことがわかっています。
135人を対象とした調査の結果、一時的に軽い症状が出たのはわずか2人だけでした。
割合にすると約1.5%で、画像診断ができなくなるようなケースは一例も報告されていません。
http://www.imrser.org/pdf/shellock.tattoo.jmri.pdf
MRIを受ける前にやって知っておきたいこと
アートメイクをしていてもMRIは受けられますが、より安全に検査を受けるためには検査可能な状態であるかを慎重に判断しなければなりません。
医師に必ず伝えるべきチェックリスト
MRIを受ける際には、アートメイクについて正しく申告することが重要です。
- 施術部位
- 施術時期(直後か、何年前か)
- 使用したインクの種類(わかる範囲で)
- 施術を行ったクリニックやサロン名
- 過去のMRIで違和感や症状があったかどうか
これらを伝えることで、医師が安全に検査を進められるようになります。
アートメイク施術直後は避ける
アートメイクをした直後は少なくとも1週間はダウンタイムがあり、期間中は色素が安定せず、施術部位の皮膚もデリケートな状態です。
こうした状態ではMRIによる磁場の影響を受けやすいことから、少なくとも2週間は空けてから検査を受けるのが望ましいとされています。
MRIが難しいときの代わりの検査
どうしてもMRIが難しいと判断される場合でも、検査を受けられないわけではありません。
検査目的や部位に応じて、以下のような画像検査に切り替えることができます。
- CT
- 超音波検査(エコー)
- PET検査 など
「アートメイクがあるからMRIは無理」と思い込む必要はなく、医師と相談することで安全な代替手段が見つかります。
インクと安全性について
アートメイクに使われるインクは時代とともに進化しています。
| 2000年代前半 | 酸化鉄インクが主流 |
| 2010年以降 | FDAやCE認可の低金属インクが普及 |
| 2020年代 | 金属成分を大幅に減らした医療グレードが一般的 |
こうしたインクの改良が進んだことで、アートメイクをしている方でも以前より安心してMRI検査を受けられるようになってきました。
「MRI SAFE」の基準について
最近では、「MRI SAFE」や「MRI Conditional」といった基準に沿ったアートメイクインクが増えつつあります。
これはMRI検査に対して安全性が確認されている、または条件付きで使用可能とされている目安です。
ただし、絶対に安全という意味ではありません。
あくまでリスクが相対的に低いことを意味し、中にはMRI SAFEと書かれていてもメーカーの自主検査や独自基準によるものも含まれます。
実際にMRIを受ける際は、施術の内容を申告した上で医師に判断してもらうのが安心です。
アートメイクとMRIのまとめ
- アートメイクがあってもMRIは原則受けられる
- 施術直後やアイラインはリスクが高いため注意
- トラブル報告は軽度で一時的かつ頻度も極めて低い
- インクは改良されて安全性は年々向上している
- 目的に応じて代替検査も検討できる
アートメイクを受けていても、ほとんどの場合MRI検査を問題なく受けられる環境になりつつあります。
不安があれば早めに医療機関に相談することで、より安心して検査に臨めるはずです。
