リップ(唇)アートメイクについて

本記事は、医療アートメイクの臨床経験を持つ石橋 夏希が、専門的知見に基づき監修しています。
リップアートメイクは唇の発色を補うだけでなく、加齢に伴う輪郭のぼやけやくすみ、生まれつきの左右差、厚みなども補正が可能です。
自然な血色感によって肌とのコントラストが生まれ、顔色が明るく見えたり、肌の透明感が増すといった視覚効果も期待できます。
リップアートメイクとは
赤唇(唇の赤い部分)の範囲に専用の針で色素を入れることで、唇の色や形を補正できる美容施術です。
デリケートな唇は施術時の痛みや口唇ヘルペスの再発リスク管理が必要なことから、医師のいる医療機関でのみ受けることができます。
こんな唇・口元の悩みにおすすめ
- 血色が悪い
- くすみや色素沈着が気になる
- 輪郭のぼやけ
- たるみなどによる左右差
- 唇が薄く、ボリューム感が出にくい
これらの悩みは生まれつきのものもあれば、加齢に伴って徐々に目立ってくるものもあります。
リップアートメイクは単なるメイク代わりとしてだけでなく、唇の状態に合わせて補正し、形や色みのベースを整える目的でも選ばれています。
歯科医院でも受けられる
最近では、美容クリニックだけでなく歯科医院(審美歯科)でもリップアートメイクの提供が進んでいます。
ガミースマイル治療やホワイトニング、セラミック、歯列矯正といった審美歯科治療とあわせて、口元をトータルケアできるのは歯科ならではのメリットです。
ブロック麻酔(注射麻酔)も使用できるので、リップアートメイクの痛みに不安がある人は選択肢のひとつとして検討しやすくなっています。
リップカラー
ポイントになるのが、元の唇のくすみ具合です。
1回目は補色であるオレンジ系でくすみを消し、2回目で希望の色を重ねていきます。
ピンク、レッド、ベージュ系など、肌トーンに合わせて希望の色を選びます。
ベースとなる唇の状態によって、最初に選ぶリップカラーが異なります。。
リップデザイン
リップアートメイクのデザインは、主に3種類が基本です。
- フルリップ(全体)
- グラデーション(ぼかし)
- リップライン(輪郭)
これらに加えてオーバーリップもありますが、皮膚と唇の質感の違いから不自然になりやすいため、推奨されないケースや施術範囲に制限がある場合がほとんどです。
フルリップ
唇の輪郭から内側まで、全体を均一に彩るデザインです。
口紅を塗ったようなしっかりとしたメイク感が出るため、顔色を明るく見せたい方や、強いくすみをしっかりカバーしたい方に向いています。
またぼやけた輪郭を整えることで、唇にボリューム感を持たせる効果もあります。
グラデーション
シャドウリップとも呼ばれ、唇の中心を濃く、外側に向かって薄くなるようにぼかしを入れるデザインです。
内側からにじみ出るような自然な血色感が出せるため、すっぴんになっても浮かないナチュラルな仕上がりを好む方に向いています。
輪郭をあえて強調しないことで抜け感が生まれ、ふっくらとした立体感のある口元に仕上がります。
リップライン
唇の輪郭(リップライン)を整えるデザインです。
ぼやけた輪郭を際立たせたり、唇の薄さや左右差を整える形の補正に向いています。
単に輪郭を縁取るだけでなく、輪郭から唇の中心に向かってぼかしを入れることで、より自然な印象になります。
オーバーリップ
赤唇(唇の赤い部分)よりも外側に色を入れ、唇を大きく見せたり、人中の長さを短く見せるデザインです。
ただし、大幅なオーバーリップは口紅がはみ出しているように見えたり、将来的に二重に見えるリスクがあります。
推奨していないクリニックも多く、希望する場合は本来の輪郭から1mm程度までにとどめるのが原則です。
口角アップ
上唇の両端の外側に上向きのラインを描き足し、口角がキュッと上がっているように見せるデザインです。
オーバーリップの一種となりますが、角度によっては口が裂けて見えたり、汚れのように見えてしまうリスクがあります。
また加齢による将来的な変化でラインが不自然に下がる恐れもあるため、推奨しているクリニックは少ないのが現状です。
メリット・デメリット
リップアートメイクはすっぴんでも自然な血色感を保てるため、顔全体のトーンが上がります。
健康的な印象を与え、下地が整うことで似合わないと感じていたリップカラーや、クリアグロス・薄付きリップなどを楽しめるのも魅力です。
一方でメイク感を出そうと濃い色を入れた場合、上からヌーディー系のカラーを重ねても発色しにくく、色選びによってはメイクの幅が狭まってしまいます。
施術から完成までの流れ
唇のくすみや色素沈着が強い場合、1回目で色みの補正(くすみ消し)を行い、土台を整えてから2回目以降で希望のカラーを定着させていく流れになります。
元の唇の状態や体質によっては色素が定着しにくいケースもあるため、仕上がりまでに2回以上の施術が必要になるのが一般的です。
見た目の経過
見た目の経過には個人差がありますが、施術直後から翌日にかけて唇が腫れぼったくなることがあります。
一見するとたらこ唇のような不自然な状態に見えますが、これは腫れや赤み、定着しきれていない色素の影響によるものです。
通常2〜3日で腫れが引き、その後の皮むけを経て1週間ほどでトーンが落ち着き、1ヶ月が経つころには色素の定着も安定してきます。
ダウンタイム
リップアートメイクのダウンタイム(回復期間)は、1週間ほどが目安です。
この期間は唇への刺激を避ける必要があり、日常生活の一部に制限がかかります。
仕上がりを左右するだけでなく、誤ったケアや行動が回復を遅らせてしまうこともあるため注意が必要です。
持続期間
2〜3回の施術を受けた場合、仕上がりの状態をキープできる期間は1〜2年程度です。
唇は食事や会話で日常的に動かし、ターンオーバーも活発なため、他の部位にくらべ早くに色が抜けやすい傾向にあります。
リタッチ(修正)
リップアートメイクをより長持ちさせるには、リタッチによって色が薄くなった部分を補うメンテナンスが必要です。
血色感が物足りなくなったり、元の唇のくすみが透けはじめたタイミングで行うことで、常にきれいな発色をキープできます。
料金相場
2回1セットで10万円〜14万円が、料金相場の目安です。
アーティストのランク(指名料)で料金が変動しやすく、ブロック麻酔を使用する歯科医院は相場よりもやや高めの料金設定になる傾向があります。
また仕上がりをキープするためのリタッチメニューなどもあるので、初期費用だけでなく、トータルでかかる費用も確認しておきましょう。
リップアートメイクの注意点
リップアートメイクは、体質や直前のケア不足によって施術を断られるケースがあります。
またダウンタイム中の食事制限や口唇ヘルペスの再発リスクなど、特有の注意点も存在します。
施術を受けられない人
- 妊娠中またはその可能性
- 授乳中(断乳または不可)
- ケロイド体質
- 重度の金属アレルギー
- 麻酔アレルギー
- 口唇ヘルペス
- 重度の皮膚疾患(アトピー、乾癬、湿疹など)
- 未治療の傷、口角炎など
- 皮膚がん・悪性腫瘍(疑い含む)
- 唇に盛り上がったホクロ・イボ・血管腫(直上不可)
- 感染症(HIV、B型・C型肝炎、梅毒など)
- 重度の心臓病
- ペースメーカーや埋め込み型医療機器を使用している
- 血液疾患(血友病、血小板減少紫斑病など)
- 重度の糖尿病(コントロール不良・合併症あり)
- 重度の高血圧
- 腎臓病・透析中
- 自己免疫疾患(膠原病・リウマチ・SLEなど)
- 抗がん剤治療中、免疫抑制状態
- 抗凝固剤・抗血小板薬
- ステロイド剤(長期服用中)
- アルコール・薬物中毒
- 精神疾患
- てんかん発作の既往(主治医の許可)
- 未成年(親権者の同意がない場合)
これら以外にも現在通院中の病気や服用中の薬があれば、自己判断せずに医師に申し出るようにしましょう。
また乾燥による皮むけやひび割れなどがあると、状態によっては当日の施術が見送りになることがあります。
リップアートメイク前に避けるべき治療・ケア
- 口元の美容整形
- イソトレチノイン(治療後から起算)
- 唇への脂肪注入
- レチノール・ビタミンA製剤(化粧品含む)
- 口周りの美容医療(脱毛・レーザー・ピーリング)
- 唇への注入治療(ヒアルロン酸・ボトックス)
- 過度な日焼け
- リップティント
- リップスクラブ
これらはあくまで目安であり、クリニックによって指定の期間が異なります。
事前に指示された期間を守らないと施術を受けられないことがあるため、必ず予約時の確認が必要です。
施術に伴う痛み
唇は神経が集中しているため、他部位に比べて痛みを感じやすい部位です。
通常は表面麻酔を使用しますが、体調・体質によっては効きにくかったり、特有の熱感やヒリヒリとした痛みを感じることがあります。
また施術後に麻酔が切れた後や、ダウンタイム中も唇に痛みや違和感を覚えることがあります。
合併症(副作用)
体質や免疫力によっては、施術後まれに合併症を引き起こすことがあります。
- 口唇ヘルペスの再発
- 感染症(化膿)
- アレルギー反応
- ケロイド(肥厚性瘢痕)
- 肉芽腫(しこり)
過去に口唇ヘルペスの既往歴がある場合は、針の刺激がきっかけとなって再発するリスクが高まります。
抗ヘルペスウイルス薬による予防対策が取られることもあるため、予約する際は事前に申告するようにしてください。
食事制限
施術後3日〜1週間(唇の状態による)は、施術によって傷ついた唇への刺激を避けるために食事制限がかかります。
- 辛い食べ物(香辛料など)
- 熱い飲食物
- 塩分や酸味の強いもの
- 着色しやすい飲食物(コーヒーやカレーなど)
- 生もの(刺身や寿司など)
また口を大きく開けると唇が引っ張られて色素定着を妨げるため、食べ物を一口サイズに小さく切ったり、飲み物にストローを使用したりするなど、一時的に食事が不便になります。
MRI検査への影響
現在は金属含有量の少ない色素が使われるケースが多く、リップアートメイクをしていてもMRI検査を受けられる場合がほとんどです。
ただし、微量の金属でも磁場に反応すると、検査画像にノイズが出て正確な診断ができなかったり、唇に熱を持ったりする可能性があります。
リスクがゼロではないため、MRI検査を受ける際は、施術を受けていることを必ず事前に申告するようにしてください。
リップアートメイクの除去について
唇に入った色素の除去は、リムーバー(除去液)と医療用レーザーを使い分けるのが一般的です。
他部位とは異なり鮮やかな色が使われているため、レーザーで一気に消そうとすると黒色変化(変色)を起こし、かえって治療が長引くおそれがあります。
まずはリムーバーで色素量を減らし、レーザーを併用するか慎重に判断する流れとなります。
おすすめのクリニック・施術者の選び方
リップアートメイクの仕上がりや安全性は、クリニックや施術者の技術力や管理体制に大きく左右されます。
価格や症例写真はもちろん、トラブルを避けるためには医療機関として信頼できるかどうかも重要な基準となってきます。
- 医療機関として届出がなされた施設
- 医師による診察(問診・唇の状態確認など)
- 医師・看護師・歯科医師・歯科衛生士の資格を有している
これらが守られていない場合、法的にグレーゾーンあるいは違法サロンの可能性が高く、施術そのものがリスクになってしまうおそれがあります。
健康被害のリスクなども懸念されるので、安全性が担保された医療機関を選ぶようにしましょう。
麻酔の種類で選ぶ
施術に伴う痛みに不安がある場合、扱っている麻酔の種類を基準にクリニックを選ぶのもひとつです。
一般的な表面麻酔だけでなく、より鎮痛効果の高いブロック麻酔(注射)や笑気麻酔に対応している医療機関もあります。
取り扱う麻酔の種類はクリニックによって異なるため、事前の問い合わせや予約時に確認するようにしましょう。
リップアートメイクについてのまとめ
リップアートメイクは色素が唇に長く残るため、仕上がりだけでなく安全性や将来的な影響も踏まえて判断することが大切です。
施術内容やリスクを踏まえたうえで、自分に合ったクリニック・施術者を選びましょう。
