アートメイクと発がん性リスク|色素の安全性と各国規制

本記事は、医療アートメイクの臨床経験を持つ石橋 夏希が、専門的知見に基づき監修しています。
アートメイクを考えるとき、「ピグメント(色素)に発がん性があるのでは?」と不安に感じる方は少なくありません。
肌に長く残るものだからこそ、安全性や成分、各国の規制状況を知っておくことが安心につながります。
アートメイクと発がん性
アートメイクに使われるピグメント(色素)によって発がんが確認された事例は、現時点ではありません。
通常の施術でただちに健康被害が起こる可能性は低いとされていますが、不純物の混入や管理不足があればリスクが高まるため各国で規制や調査が進められています。
アートメイクのピグメントには何が入っている?
アートメイクのピグメントに含まれているのは、酸化鉄や白色の二酸化チタンといった金属成分を含む無機顔料が中心です。
どちらもファンデーションやマスカラ、口紅、日焼け止めなどに含まれている身近な成分になります。
また色味の調整やデザインに応じて、赤やピンク系などの有機顔料(着色料)を組み合わせることもあります。
添加物と不純物
アートメイクのピグメントには、保存料や分散剤、pHを整える成分などの添加物も含まれています。
添加物はインクの保存状態を安定させ、施術中に色が均一に入るようにするために使われます。
一方、製造の過程で微量に混入することがある以下の不純物は、健康への影響が指摘されています。
- 鉛やニッケルなどの重金属
- PAHs(多環芳香族炭化水素) など
こうした物質はEUやアメリカで規制の対象となっており、上限値や禁止成分リストが整備されています。
基準を超える成分が検出された場合は、使用禁止となることもあります。
IARC分類
IARC(国際がん研究機関)は化学物質の発がん性を評価する国際機関で、物質を以下のようにグループ分けしています。
| IARC分類 | |
|---|---|
| Group1 | 発がん性あり |
| Group2A | おそらく発がん性あり |
| Group2B | 発がん性の可能性あり |
| Group3 | 十分な証拠がない |
アートメイクに使われる酸化鉄や二酸化チタンといった金属成分は、「発がん性あり」とされているわけではありません。
ただし、混入することがある重金属やPAHsの一部は「発がん性の可能性がある」と評価されています。
なお、IARC分類は「発がんの可能性」を示すもので、実際のリスクはどれくらいの量に触れるかや使われ方によって変わります。
ごく微量に含まれている場合や管理された環境で使われている場合は、ただちに危険になるわけではありません。
発がん性物質の規制
アートメイク用のピグメントに対する規制は国や地域によって大きく異なります。
厳しく成分を制限している地域もあれば、自主規制や市場監視にとどまっている地域もあり、世界的に統一されたルールは存在しません。
日本
日本ではアートメイク用のピグメントについて、厚生労働省が承認した製品はまだありません。
発がん物質に関する明確な規制も十分ではないため、現状は海外製(特にヨーロッパ製)を医師の裁量や個人輸入で使用するケースが中心となっています。
最近では日本ブランドも増えつつありますが、OEMとして海外で製造されたものを販売しているケースが多いのが実情です。
「日本製がある」という安心感は高まっていますが、正式な承認制度や規制の仕組みを整えることが今後の課題となっています。
韓国
韓国では2024年9月の調査で、一部のアートメイク用ピグメントから発がん性物質が検出されました。
これを受けて国は監視体制を強化し、消費者への注意喚起も行っています。
海外製品の流通が多い中で安全基準の見直しや規制の強化が進められており、信頼性を高める取り組みが続いています。
ヨーロッパ
EUでは2022年から、健康に害を及ぼす可能性のある成分を厳しく制限するREACH規制がはじまりました
アゾ系色素や一定基準以上の重金属、刺激性化学物質などは使用禁止となり、成分表示やロット番号を記載するルールも導入されています。
世界でも最も厳しい基準のひとつとされ、アートメイク業界全体の品質向上につながっています。
[参考:規制内容]
(https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX%3A32020R2081)
[参考:禁止・制限物質リスト]
(https://echa.europa.eu/substances-restricted-under-reach)
アメリカ
アメリカでは、FDA(食品医薬品局)が承認したアートメイク用インクは存在しません。
インクは「化粧品」「カラー添加物」として扱われていますが、事前に安全性を審査して承認する仕組みはなく、実際の管理はメーカーの自主規制や市場監視に依存しています。
新しい化粧品関連法(MoCRA)の施行で、安全性に関する情報開示や製造管理の強化が進められていますが、EUのように事前に使用成分を厳しく制限する制度は整っていません。
また2025年には細菌が混入したインクが確認され、2種類の製品がリコールされています。
どこの国のピグメントがいいのか
ヨーロッパ(特にEU圏)でREACH規制などをクリアしたピグメントは、発がん性物質や重金属、アゾ色素の分解物、アレルゲンなどを法律で厳しく制限しています。
さらに成分の開示やロット番号の管理も義務づけられており、透明性と信頼性が高いのが特徴です。
- Perma Blend(イギリス・EU)
- Biotek(イタリア)
- Biotic Phocea(フランス)
- Purebeau(ドイツ)
- Artyst(ドイツ) など
安心して選ぶためには、ヨーロッパ製のピグメントを基準に考えるとよいでしょう。
ヨーロッパ以外で良いとされるピグメント
韓国ではヨーロッパの規制を参考にした安全基準づくりが進められています。
2024年12月には文身用染料(アートメイクやタトゥー用の色素)の製造・検査・表示を義務づける基準案が行政予告されました。
- DOREME(ドレメ)
- Guapa(グアパ)
- BIOMASER(バイオメーザー) など
韓国製のピグメントもEU基準に準拠したものが多く流通しており、ヨーロッパに次いで安全性が高いと評価されています。
[参考:]
(https://www.mfds.go.kr/brd/m_99/view.do?seq=48781)
アートメイクと発がん性リスクのまとめ
アートメイクのピグメントは大きな健康被害が確認された例はなく、信頼できる製品を選べば安全性は高いと考えられます。
とくにEUや韓国の基準をクリアした製品を目安にすると安心です。
- どの国の基準をクリアしたピグメントか(EU・韓国など)
- 成分表示や認証が明確にされているか
- リスクについて医師や施術者から説明があるか
信頼できる製品が使われ、適切に管理された環境であれば、アートメイクは安心して受けられる施術です。
