アートメイクと発がん性リスク|色素の安全性と各国の規制

本記事は、医療アートメイクの臨床経験を持つ石橋 夏希が、専門的知見に基づき監修しています。
日本国内において、アートメイクが原因で発がんしたという報告はこれまでありません。
しかし、海外では一部の色素から発がんの可能性がある物質が検出されており、ほぼ海外からの輸入に頼っている日本も例外とは言い切れないのが現状です。
時間をかけて少しずつ色抜けしていくものの、皮膚に残り続ける以上、色素の安全性はクリニック選びの重要な基準となります。
アートメイクの色素に含まれる成分
- 無機顔料
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鉱物や金属をベースに作られる顔料
- 有機顔料
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石油などから化学的に合成される顔料
どちらも体にとっては異物です。
洗えば落ちる一般的なメイクとは異なり、長期間にわたって皮膚に留まり続けるため、不純物や、皮膚内で成分が分解されることによる将来的な発がんリスクが懸念されています。
無機顔料
身近なメイク用品などにも含まれる顔料ですが、製造の過程で重金属がわずかに混入します。
カドミウム、鉛、ヒ素、ニッケル、クロムなど
こうした重金属は国際がん研究機関(IARC)から、人に対して発がん性、またはその可能性があると分類されている成分です。
[参考:国際がん研究機関(IARC)]
(https://publications.iarc.who.int/120)
有機顔料
体内の酵素や紫外線、アートメイク除去のレーザーなどによって分解されやすい顔料です。
成分そのものに発がんリスクはないものの、分解時に発がん性が指摘される「特定芳香族アミン」が生成・放出されることが確認されています。
[参考:欧州委員会共同研究センター(JRC)]
(https://publications.jrc.ec.europa.eu/repository/handle/JRC101601)
各国の発がん性物質の安全基準
基準をクリアしていれば100%安全と言い切れる色素は、世界的に見ても存在しません。
世界一厳しいとされるヨーロッパでさえ、基準値を超えた有害物質が含まれた色素の流通を防ぎきれていないのが現状です。
粗悪品を皮膚に入れないためにも「〇〇基準クリア=安全」と鵜呑みにせず、施術前にきちんと説明を受ける必要があります。
日本・アメリカ
日本には厚生労働省が承認したアートメイク用色素はなく、医師の裁量で海外から輸入・使用されています(※一部の医師が独自開発した国産色素も存在します)。
またアメリカについても、色素は化粧品として扱われるため事前の安全審査は行われておらず、有害物質が検出されてからリコールになる事例が発生しています。
したがって、「FDA承認の色素=人体に害はない」ということにはなりません。
[参考:アメリカ食品医薬品局(FDA)]
(https://www.fda.gov/safety/medical-product-safety-information/fda-advises-consumers-tattoo-artists-and-retailers-avoid-using-or-selling-certain-sacred-tattoo-ink)
ヨーロッパ
ヨーロッパでは2022年からREACH規則により、重金属などに世界一厳しい基準を設けています。
しかし一部の製品は規制をすり抜け、基準値を超える発がん性物質が検出されています。
日本やアメリカに比べれば色素の成分管理意識は高いものの、ヨーロッパ基準をクリアしているからといって完全に無害とするのはリスクです。
[参考:規制内容(EUR-Lex)]
(https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX%3A32020R2081)
[参考:制限物質リスト(ECHA)]
(https://echa.europa.eu/substances-restricted-under-reach)
[参考:REACH規則施行後の安全性評価に関する最新研究(NCBI / 2025年)]
(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12656104/)
韓国
韓国では2024年9月に政府機関である韓国消費者院が行った調査において、一部のアートメイク用色素から発がん性物質が検出されています。
日本国内のクリニックで韓国製の色素が使用されるケースは少ないですが、安さを理由に韓国へ渡航して施術(特にサロンなど)を受けるのであれば注意が必要です。
アートメイクと発がん性リスクのまとめ
がんは検出できるまでに10〜20年と長い時間がかかるのが一般的で、生活習慣や遺伝、ウイルス・細菌感染、環境などが複雑に絡んで発症します。
アートメイクを入れたからといって直ちに発がんの引き金になるとは言えず、万が一がんを発症したとしても、直接的な原因であると特定するのは難しいです。
とはいえ、皮膚に残る色素が将来的にどのような影響を与えるかは未知数な部分もあるため、十分に納得した上で施術を受けるようにしてください。
よくある質問
[参考:アメリカ国立医学図書館(NLM)]
(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11736920/)
[参考:ランセット(The Lancet)]
(https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370%2824%2900228-1/fulltext)
