ボディ(傷跡/妊娠線/ニップル)アートメイクについて

本記事は、医療アートメイクの臨床経験を持つ石橋 夏希が、専門的知見に基づき監修しています。
ボディアートメイクは、疾患、外傷、手術などによって変化した身体の見た目を補正・再建する医療補助技術(パラメディカル)です。
周囲の肌と馴染ませてカモフラージュすることで、コンプレックスによる精神的な負担を軽減し、QOL(生活の質)の向上をサポートします。
ボディ(傷跡・妊娠線・ニップル)アートメイク について
周囲の健康な皮膚の色に合わせて専用の針で色素を定着させ、色差をなくすことで患部を馴染ませるアートメイク技術のひとつです。
凹凸などを治すことはできませんが、目の錯覚(視覚効果)を利用して目立たなくさせることができます。
単なる美容施術ではなく、高度な医療知識と専門技術が求められるため、実施できる医療機関が限られています。
こんな体の悩みにおすすめ
- ストレッチマーク(妊娠線や肉割れ)
- 帝王切開や外科手術の傷跡(オペ痕)
- リストカットや怪我・火傷の跡
- 白斑(尋常性白斑)
- 乳がん手術後の乳輪・乳頭再建
- 乳輪の形・大きさ・左右差の補正 など
他人の視線が気になったり、自分に自信が持てないといった、外見の違いによるコンプレックスや精神的なストレスを軽減します。
また隠さなければならないというプレッシャーからも解放されることで、前向きな日常生活を取り戻すことにつながります。
施術方法
ボディアートメイクの施術方法は、患部の状態に応じて色差をなくすか、立体感を再現するかの2種類に分けられます。
いずれも塗り潰してマットに仕上げるのではなく、目の錯覚を利用して周囲の皮膚に溶け込ませてカモフラージュするのが特徴です。
スキンカモフラージュ(傷跡・妊娠線)
傷跡や妊娠線を塗りつぶすのではなく、微細なドット(点)の集合で周囲の肌色に馴染ませる技法です。
均一に色を入れると逆にマットで不自然になるため、あえて隙間を作りながら色素を置くことで、元の肌が持つ特有の色ムラや質感を再現します。
3Dパラメディカル(乳輪・乳頭再建)
乳がん手術などで失われた乳輪や乳頭を、色彩の濃淡だけで視覚的に再建する技法です。
実際には平らな皮膚であっても、ハイライト(光)とシャドウ(影)を緻密に計算して描き込むことで、あたかも突起があるかのような立体感を再現します。
メリット・デメリット
ボディアートメイクは体にメスを入れることなく、失われた色やパーツを補い、見た目を限りなく元の状態に近づけられます。
その反面、一度ダメージを負った組織への施術となるため、健康な肌に比べて色素の定着が不安定になりやすく、触った時の質感までは取り戻せないという限界もあります。
施術から完成までの流れ
通常のアートメイクと同様に、1回目は体の免疫反応によって色素が排出されやすいため定着しにくい傾向があります。
少なくとも2回の施術が必要になり、傷跡などで組織が硬化していたり不均一な場合は、3回以上の施術が必要になるケースがあります。
見た目の経過
施術直後は、仕上がりイメージよりも施術した部分が濃く見えます。
数日〜1週間ほどかけて薄いかさぶたとなって剥がれ落ちる過程で、一時的にまだらになったり薄くなりますが、皮膚の回復とともに自然な色みへと落ち着いていきます。
ダウンタイム
施術でできた細かな傷口の回復と色素定着のため、ダウンタイムは約1週間が目安です。
この期間は摩擦や紫外線、乾燥といった外部刺激から患部を守るため、日常生活の一部に制限がかかります。
また施術部位が衣類や下着と直接触れる場合は、患部に負担がかからない服装で過ごす必要があります。
持続期間
肌質や体質、ライフスタイルによる個人差がありますが、持続期間は1〜3年が目安です。
特に衣類や下着の摩擦や、紫外線の影響を受けやすい部位は、色素が薄くなるスピードが早まる傾向にあります。
完全に消えることはありませんが、皮膚のターンオーバーによって色素が薄くなっていくため、仕上がりの状態をキープするにはメンテナンスが必要です。
リタッチ(修正)
薄くなった部分に色素を補ったり、デザインのぼやけや体型変化に合わせた微調整を行う施術です。
自然な状態を保つためには、1〜2年ごとのメンテナンスが推奨されています。
料金相場
- 傷跡
-
5万円〜15万円(2回)
- 妊娠線・肉割れ
-
3万円〜20万円(2回)
- ニップル
-
6万円〜30万円(2回 / 両側・片側)
料金は施術面積や技術(Skin52など)によって大きく異なるほか、クリニックによっては診察料や指名料、麻酔代が別途かかる場合があります。
なお、乳がんによる乳房全摘・再建手術の一部としてアートメイクを受ける場合でも、保険適用外となり、原則として医療費控除の対象にもなりません。
ボディ(傷跡・妊娠線・ニップル)アートメイクの注意点
医療行為のため、体質や皮膚の状態によっては施術を受けられず、手術や他の治療とも適切な間隔を空ける必要があります。
また副作用やMRI検査への影響など、施術後や将来的な影響についても注意が必要です。
施術を受けられない人
- 妊娠中または妊娠の可能性
- 授乳中(断乳または不可)
- ケロイド体質
- 重度の金属アレルギー
- 麻酔アレルギー
- 未成熟な傷跡(赤みや硬さ、膨らみが残っている)
- 局所の感染症(化膿やとびひ、ヘルペス発症中など)
- 皮膚がん・乳がんの局所再発(疑い含む)
- 良性か悪性かわからない腫瘍がある
- ティッシュ・エキスパンダー(皮膚拡張器)挿入中
- 感染症(HIV、B型・C型肝炎、梅毒など)
- 重度の心臓病
- ペースメーカーや埋め込み型医療機器を使用している
- 血液疾患(血友病、血小板減少紫斑病など)
- 重度の糖尿病(コントロール不良・合併症あり)
- 重度の高血圧
- 腎臓病・透析中
- 自己免疫疾患(膠原病・リウマチ・SLEなど)
- がん治療中および経過観察中
- 抗凝固剤・抗血小板薬
- ステロイド剤(長期服用中)
- アルコール・薬物中毒
- 精神疾患
- てんかん発作の既往(主治医の許可)
- 未成年(親権者の同意がない場合)
上記はあくまで代表的な例であり、記載のない症状や状態であっても、医師の診察により安全が確保できないと判断された場合は施術を受けられないことがあります。
また主治医の許可や血液検査のデータがあれば、施術が可能となるケースもあります。
ボディ(傷跡・妊娠線・ニップル)アートメイク前に避けるべき治療・ケア
- 乳房再建手術
- 帝王切開
- 開腹手術
- タミータック(腹壁整形)
- シリコン豊胸
- 脂肪注入
- 脂肪吸引
- イソトレチノイン(治療後から起算)
- レチノール・ビタミンA製剤(化粧品含む)
- 注入治療(ヒアルロン酸・ボトックス)
- 美肌治療(レーザー治療・脱毛・ピーリングなど)
- 過度な日焼け
記載されている項目はあくまで一例となり、期間も目安となるため、肌状態やクリニックの方針によって判断が異なる場合があるので事前の確認が必要です。
また変色のリスクがあることから、施術部位への美肌治療(レーザー治療・脱毛・ピーリングなど)は原則として受けられなくなります。
合併症(副作用)
- 感染症(化膿)
- アレルギー反応
- ケロイド(肥厚性瘢痕)
- 肉芽腫(しこり)
稀ではあるものの、皮膚に針を刺して色素を入れる以上、リスクを完全にゼロにはできません。
万が一施術後に強い赤みや腫れ、痛み、膿などの異常を感じた場合は、放置せずに施術を受けたクリニックまたは皮膚科を受診してください。
MRI検査への影響
MRI検査を受けることは可能ですが、色素に含まれる微量の金属成分がMRIの磁場に反応することがあります。
稀に施術部位に熱感や火傷が生じるほか、検査画像にノイズが入る(アーチファクト)ことで診断に支障をきたすリスクがあります。
MRI検査を受ける際は、必ず事前に医師や検査技師へ施術部位と時期を申告してください。
ボディ(傷跡・妊娠線・ニップル)アートメイクの除去について
ボディアートメイクは、医療用レーザーやリムーバー(除去液)を使い分けて色素を薄くしていきます。
ただし、ベージュや白、ピンクなどの明るい色素が使われているため、最初にレーザー照射すると黒く変色するリスクがあります。
施術回数がかかりますが、まずはリムーバーで色素を減らしつつ、状態を見極めながらレーザーの併用を慎重に検討するのが一般的です。
おすすめのクリニック・施術者の選び方
通常の美容目的とは異なり、ボディアートメイクは医療補助(パラメディカル)の側面が強い施術です。
乳がん手術や外傷治療の仕上げとして行われるため、デザイン力だけでなく、より高度な医療判断と技術力がある環境を選ぶのがポイントになります。
- 傷跡や欠損部への施術経験が豊富
- 医療機関との連携
- 形成外科的な知識
- 症例写真
これらの条件を満たしているクリニックであれば、アートメイクありきにならず、他の治療法も含めた適切な診断を受けることができます。
ボディ(傷跡・妊娠線・ニップル)アートメイクについてのまとめ
ボディ(傷跡・妊娠線・ニップル)アートメイクは、外見の変化による心身の苦痛をやわらげ、社会生活をサポートするアピアランス(外見)ケアの一種です。
ただし、カモフラージュによる視覚的な補正であるため、皮膚の凹凸や質感を根本から治すことには限界があります。
自分らしく過ごすためにも、形成外科的な知識を持つ専門医に相談しつつ、レーザー治療や外科処置といった他の選択肢も含めて検討することが大切です。
